ニューヨークの街を歩いていると、ここ数年で明らかに増えたものがある。ノンアルコール飲料だけを扱う専門店だ。マンハッタンのアッパーウエストサイドでは、Columbus Avenue沿いに新たなノンアルコール専門のボトル&ミクソロジーショップがオープンした。同じマンハッタンのアッパーイーストサイドでは、Lexington Avenue沿いにアルコールフリーのカクテルショップが開業している。すでに西海岸的な”Sober Curious”ムーブメントの代名詞ともいえるBoissonは、ウエストビレッジをはじめ複数店舗を展開中だ。
これはもはや一時的な流行ではなく、ニューヨークの飲食シーンに定着した新しいカテゴリーだと言っていい。
Dry January(1月の禁酒チャレンジ)から始まった習慣が、1年を通じたライフスタイルへと変化しているのが大きな背景にある。Z世代やミレニアル世代を中心に「飲まない選択」を特別なことではなく日常の一部として楽しむ”Sober Curious”な消費行動が広がり、業界関係者の間でも「これはブームではなく、新しい恒常的なカテゴリーだ」という見立てが一般的になってきている。
重要なのは、こうした専門店が単発で終わらず、同時多発的に複数のエリアで生まれている点だ。アッパーウエストサイド、アッパーイーストサイド、ウエストビレッジ――それぞれ客層も雰囲気も異なるニューヨークの各エリアで、それぞれの”ノンアルコール版リカーショップ”が成立し始めている。
アッパーウエストサイド(Columbus Avenue)
地元住民向けの新規オープン情報として報じられたのが、ノンアルコール専門のボトル&ミクソロジーショップだ。ワインやスピリッツの代替となるノンアルコール飲料を、カクテル材料としても使える形でセレクトしているのが特徴で、「お酒を飲まない日でも特別な一杯を作れる」というニーズに応えている。
アッパーイーストサイド(Lexington Avenue)
こちらはアルコールフリーのカクテルを専門に提供する店舗で、バーとボトルショップの両方の機能を持つ業態として紹介されている。単に”飲まない人向け”というより、カクテル文化そのものをノンアルコールで再現しようとする試みだ。
ウエストビレッジ、その他複数エリア(Boisson)
2021年からウエストビレッジで営業しているBoissonは、すでに複数店舗を展開する”先行者”的な存在。新規参入組が増えているのは、Boissonのようなプレイヤーがニューヨークでこの業態の採算性を証明してきたことの裏返しでもある。
こうした小売の広がりを支えているのは、クラフトノンアルコールビール自体の生産力の拡大だ。例えば新興ブランドのRationAle Brewingは生産能力を7万バレル規模に拡大し、レシピとパッケージを刷新したと報じられている。大手ブランドのAthletic Brewingも市場シェアで引き続き優位を保っているとされ、「大手が市場を切り拓き、新興ブランドが品揃えの多様性を支える」という構図が、小売店側の品揃え充実を後押ししている。
つまり、「店が増えた」という現象の裏には、「選べる商品が増えた」という供給側の変化がある。専門店が成り立つのは、棚に並べる選択肢が十分に増えたからこそなのだ。
日本でもノンアルコールビールやカクテルの選択肢自体は増えているが、ニューヨークのように「ノンアルコール専門店」という業態が街中に複数成立している状況には、まだ距離がある。コンビニやスーパーでの品揃え拡充が中心で、専門の実店舗という形は限定的だ。
アメリカ、特にニューヨークの動きは、今後他の都市や他の国の飲食シーンがどう変化していくかを考える上で、一つの参考になる事例といえる。ANY HOURでは、こうしたアメリカの最新動向を継続的に追いかけて記事として紹介していく。
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